浄土宗 伝授山 長応院


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第14回  安心と不安

望む物が得られる事が出来ない時、欲が満たされない時、思い通りにならない時、不安定な状況が解消されない時、安定を求め苦しみと不安を覚えます。
これぞ釈尊曰く「一切皆苦」の理であり、「求不得苦」(求める物が得られない苦しみ)であります。
心得を頭で知っていてもこの苦しみはなかなか絶つ事が出来ないのが普通なのかもしれません。でもそれが当たり前として済ませて良いのかという事です。
俗に修行とか精進等と言いますが、少しでも苦を減らしたいものです。ここが葛藤の原点になりましょう。 釈尊は「思い通りにならない」と悟られたにもかかわらず、世間は思い通りを貫こうと想定を踏まえながら近代文明を構築して来ました。今回の震災では人間の「想定」の無意味さが露呈しました。想定外に陥った時の人間のはかなさが無明であれ寂しさを覚えます。私達はどうしたら良いのでしょう。
法然上人は少々違った観点から言っています。自然法爾。求める事を止めよ、ただひたすらに願往生と念仏に安心を覚え、目前の調和に逆らわず身と心をゆだねなさい、(世の習い)と。念仏の仏はすなわち阿弥陀仏、誰をも救うとたてられた慈悲のホトケであります。
震災前の自身の慢心の償いに今では念仏の数が増える毎日であります。

2011年9月4日